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八千代台図書館・公民館合同主催講座「やちよの自然発見!~やちよの谷津・里山を知ろう~」が開催されました
講座概要
開催日時 令和7年11月26日13時30分から15時
会 場 八千代台公民館研修室
講 師 八千代市経済環境部環境政策課
ゼロカーボンシティ推進室
原谷 豪 主査
井尻 京吾 主事
参加人数 18人
会 場 八千代台公民館研修室
講 師 八千代市経済環境部環境政策課
ゼロカーボンシティ推進室
原谷 豪 主査
井尻 京吾 主事
参加人数 18人


令和7年11月26日の開催日当日は,この時期としてはとても過ごしやすい陽気。ときおり11月らしいどんよりとしたすっきりしない空模様が顔をのぞかせた日もありましたが,その割に寒さは控えめで,まさに里山歩きをするには最適な週となりました。
今年度4回目のの八千代台図書館・公民館合同主催講座は「やちよの自然発見~やちよの谷津・里山を知ろう~」と題して開催いたしました。住宅都市化が進む八千代市。八千代台界隈はもちろんのこと,近年まで里山的な雰囲気を残していた吉橋地区(緑が丘西)も大規模な開発が進行中です。ですので,あまり郷土の自然といわれても実感を持てない方が大部分ではないでしょうか。
しかし,八千代市の北部や中央図書館付近など,少し足を延ばせば,八千代市にも谷津・里山の日本的原風景があります。意外に近くて意外なほど豊かな八千代市の自然について,八千代市経済環境部環境政策課ゼロカーボンシティ推進室の原谷さんと井尻さんをお迎えし,講話をいただきました。
今年度4回目のの八千代台図書館・公民館合同主催講座は「やちよの自然発見~やちよの谷津・里山を知ろう~」と題して開催いたしました。住宅都市化が進む八千代市。八千代台界隈はもちろんのこと,近年まで里山的な雰囲気を残していた吉橋地区(緑が丘西)も大規模な開発が進行中です。ですので,あまり郷土の自然といわれても実感を持てない方が大部分ではないでしょうか。
しかし,八千代市の北部や中央図書館付近など,少し足を延ばせば,八千代市にも谷津・里山の日本的原風景があります。意外に近くて意外なほど豊かな八千代市の自然について,八千代市経済環境部環境政策課ゼロカーボンシティ推進室の原谷さんと井尻さんをお迎えし,講話をいただきました。
講座の様子
谷津や里山は日本の原風景とされていますが,それはなぜでしょうか。それは,日本人がかつて自然と共に歩み,自然と共に営みを行っていた共存の証であるからです。
もちろん自然とともにある生活は世界中に存在しますが,日本の谷津・里山は,薪や炭,落ち葉などの肥料,山菜,キノコといった生活に必要な資源を地域住民が山から得て利用してきました。そのため自然そのままの原生林ではなく,人の手が入ることで,森や草地,水辺などがモザイク状に入り混じった多様な環境が保たれ,四季を織りなす美しい風景がかつては日本のあちこちで見られました。そしてその環境は日本の固有種や絶滅危惧種を含む多くの生き物が生息する豊かな場所となっていたのです。
代表的な谷津としては千葉県鴨川市の大山千枚田や千葉市の大草谷津田いきものの里,代表的な里山としては兵庫県川西市の黒川地区や新潟県佐渡市の「佐渡の里山」などがとくに有名です。
八千代市は都心から30キロ圏内にあるにも関わらず,谷津と里山の両者が良好な状態で一体的に残っていることは稀有なことと言えます。特に島田谷津は環境省の選定する「生物多様性保全上重要な里地里山」に指定されています。理由は谷津頭(谷の源流)が残っていることと,県内で唯一生息が確認されている希少水生植物「ヤマトミクリ」が群生していることが主な理由ですが,谷津田を中心とした農的な営みが続いていること,数多くの動植物が観察されることも特筆されます。
若干古めの記録にはなりますが,10~20年ほど前の郷土資料を確認すると,ヘイケボタルやカワセミ,コゲラ,フクロウなどを観察した記録があります。フクロウやアオダイショウなどが生息しているということは,カヤネズミなどの野ネズミ類も豊富に生息していることを示しています(ネズミ類は基本的にとても用心深いため,捕獲記録は資料上では確認できませんでした。)。
最近ではカワセミは新宿御苑や不忍池で観察されておりますし,コゲラのようなキツツキ類ですら東京の街路樹での生息の報告もあり,必ずしも八千代市の里山だけでみられる生物という訳ではないのですが,豊富な生物相が絶妙に連鎖した環境が,ごく身近で保たれていることに驚きを禁じえません。
そうした貴重な八千代市の自然について,原谷さんからは主にゼロカーボンシティ推進に関する視点を交えながら,解説をいただきました。少し難しめのおはなしもありましたが,参加者の方は頷きながら,八千代市の里山保全に様子や「ほたるの里」に関する取組などを真剣に聞き入っておられました。八千代市に生息するホタルはゲンジボタルではなくヘイケボタルであることなどは意外なおはなしであったのではないでしょうか。
井尻さんからは八千代市に生息する動物等に関するクイズがあり,今講座で一番盛り上がった瞬間であったかもしれません。オオタカが生息しているという話が出るや,会場からはどよめきもありました。
今回の講座を機に,郷土の自然に触れ,歩き,感じることで八千代市の自然環境を誇りとし,また今後の八千代市のまちづくりのありかたのヒントともしていただけるのであれば,企画したものとしては幸いでございます。
会場では図書館司書が選書した,関連のブックリストを配布させていただきました。
今回,多くの好意的な評価を頂戴した一方で,もう少し八千代市の里山に関するおはなしが聞きたかった,フィールドワークに期待するといった声も頂きました。今後の講座に反省や検討材料として活かしてまいりたいと思います。参加者の皆さん,講師の原谷さん,井尻さん,スタッフの皆さん大変お疲れ様でした。次回も楽しくも役に立つ講座を企画していきたいと思います。
今後とも八千代台図書館・八千代台公民館をよろしくお願いいたします。
もちろん自然とともにある生活は世界中に存在しますが,日本の谷津・里山は,薪や炭,落ち葉などの肥料,山菜,キノコといった生活に必要な資源を地域住民が山から得て利用してきました。そのため自然そのままの原生林ではなく,人の手が入ることで,森や草地,水辺などがモザイク状に入り混じった多様な環境が保たれ,四季を織りなす美しい風景がかつては日本のあちこちで見られました。そしてその環境は日本の固有種や絶滅危惧種を含む多くの生き物が生息する豊かな場所となっていたのです。
代表的な谷津としては千葉県鴨川市の大山千枚田や千葉市の大草谷津田いきものの里,代表的な里山としては兵庫県川西市の黒川地区や新潟県佐渡市の「佐渡の里山」などがとくに有名です。
八千代市は都心から30キロ圏内にあるにも関わらず,谷津と里山の両者が良好な状態で一体的に残っていることは稀有なことと言えます。特に島田谷津は環境省の選定する「生物多様性保全上重要な里地里山」に指定されています。理由は谷津頭(谷の源流)が残っていることと,県内で唯一生息が確認されている希少水生植物「ヤマトミクリ」が群生していることが主な理由ですが,谷津田を中心とした農的な営みが続いていること,数多くの動植物が観察されることも特筆されます。
若干古めの記録にはなりますが,10~20年ほど前の郷土資料を確認すると,ヘイケボタルやカワセミ,コゲラ,フクロウなどを観察した記録があります。フクロウやアオダイショウなどが生息しているということは,カヤネズミなどの野ネズミ類も豊富に生息していることを示しています(ネズミ類は基本的にとても用心深いため,捕獲記録は資料上では確認できませんでした。)。
最近ではカワセミは新宿御苑や不忍池で観察されておりますし,コゲラのようなキツツキ類ですら東京の街路樹での生息の報告もあり,必ずしも八千代市の里山だけでみられる生物という訳ではないのですが,豊富な生物相が絶妙に連鎖した環境が,ごく身近で保たれていることに驚きを禁じえません。
そうした貴重な八千代市の自然について,原谷さんからは主にゼロカーボンシティ推進に関する視点を交えながら,解説をいただきました。少し難しめのおはなしもありましたが,参加者の方は頷きながら,八千代市の里山保全に様子や「ほたるの里」に関する取組などを真剣に聞き入っておられました。八千代市に生息するホタルはゲンジボタルではなくヘイケボタルであることなどは意外なおはなしであったのではないでしょうか。
井尻さんからは八千代市に生息する動物等に関するクイズがあり,今講座で一番盛り上がった瞬間であったかもしれません。オオタカが生息しているという話が出るや,会場からはどよめきもありました。
今回の講座を機に,郷土の自然に触れ,歩き,感じることで八千代市の自然環境を誇りとし,また今後の八千代市のまちづくりのありかたのヒントともしていただけるのであれば,企画したものとしては幸いでございます。
会場では図書館司書が選書した,関連のブックリストを配布させていただきました。
今回,多くの好意的な評価を頂戴した一方で,もう少し八千代市の里山に関するおはなしが聞きたかった,フィールドワークに期待するといった声も頂きました。今後の講座に反省や検討材料として活かしてまいりたいと思います。参加者の皆さん,講師の原谷さん,井尻さん,スタッフの皆さん大変お疲れ様でした。次回も楽しくも役に立つ講座を企画していきたいと思います。
今後とも八千代台図書館・八千代台公民館をよろしくお願いいたします。




アンケートから(すべてご紹介できず,申し訳ありません。原文のまま掲載しております。)
・里山のマップ情報が知れたのはとても嬉しかった。里山の散策スポットがあればもっと嬉しかった。
・最近佐倉市の森のようちえん さくらんぼに行ってます。その里山が八千代市にあるかとても気になり,調べてました。車で行けて自然とふれあいながらのんびり過ごせる場所が八千代市にあると嬉しいです。
・このような座学を学んで,その後フィールドワークがあるととてもわかり易く深まると思いました。
・八千代の生物について実際に知ることが出来てとても勉強になりました。このような機会があると嬉しいです。参考図書読んでみたいと思います。ありがとうございました。
・ありがとうございました。
・クイズおもしろかったよ!
・わかりやすくておもしろかったです。ありがとうございました。
・自然観察系に興味があるので,観察会を増やしてほしい。
・楽校(※里山整備ボランティア人材育成講座「里山楽校」)でなく,散歩として実際に歩きながら説明してほしい。
・実際に聞いたあとで,歩いてみたかった。
・八千代の谷津・里山の説明が少なかった。
・環境に対する考え方主体のような気がした。
・スライドをホームP等をつかって提示してほしい。
八千代台図書館がおススメする講座のポイント 「ヤマトミクリ・オオタカ」
今回の講座中ではあまりその名が挙がらなかった「ヤマトミクリ」ですが,環境省レッドリストにおいて準絶滅危惧種(NT)に指定され,ほとんどの都府県においても絶滅危惧種に指定されているとても貴重な水生植物です。千葉県内では唯一,八千代市の島田谷津において群生が確認されています。
溜め池や河川に生息する多年草で,水底で地下茎が発達する特徴があります。花期は5月から9月で,花が並んで咲く特徴があります。名前の由来は大和地方(今の奈良県あたり)で多くみられたからだと言います。
このヤマトミクリは水の流れの早い場所や深い水域,激しい水質汚濁に弱く,都市化された環境では根付きません。そのため非常に場所を選び,デリケートな条件が揃った箇所でのみ植生可能な植物なのです。これだけでも島田谷津の環境が稀有であることがわかります。
なお,岡山理科大学のHPにおいて,ヤマトミクリの記事にて「岡山空港の建設に伴って,近隣の公的施設に移植し成功したは良いが,異動してきた所長さんにそれが伝達されず,群生がきれいさっぱりに除去されてしまった,種の知識が無ければ単なる茂りすぎる雑草にみえたであろう。(要約)」とあり,八千代市においても同様の懸念はあります。皆さんもヤマトミクリを見かけたら,無暗に伐採することの無いようお願いいたします。
また,島田谷津では猛禽類「オオタカ」の生息が確認されています。オオタカはその名に反し,猛禽類の中では中型ですが,成鳥の羽毛の一部が青みがかった灰色をしているため,「蒼鷹(あおたか)」が転じてオオタカの名となったという説が有力です。オオタカもまた都市への進出組でもあり,明治神宮外苑などでも観察されておりますが,本来は里山の森林生態系において,食物連鎖の頂点に位置する生物です。
オオタカの行動圏は広く,その生息には狩りの対象とするハトやカラスなどの鳥類,ネズミやリス(八千代市内でもリスの生息が報告されています。)などのげっ歯類を中心とした小型哺乳類が豊富に生息していることが必要です。また,田でよくみられるサギなどの大型鳥類も時として襲うこともあります。
オオタカのような食物連鎖の頂点に立つ動物が生息できるということは,その下層の植物類や昆虫,小動物,中型の鳥類まで,多様で豊かな生物相が健全に存在していることを証明しています。
また,オオタカが獲物を狙うためには見通しの良い大きな木が必要で,地域の農林業の営みの中で育まれ,維持されてきた里山の森林が,オオタカの繁殖地や狩場を提供してきました。そのため,良好な里山環境が維持されてきたという何よりの証となります。
「ヤマトミクリ」と「オオタカ」という要素が揃う八千代市の谷津・里山。東葉高速鉄道の開通以来,八千代市北部の住宅がまばらな地区にも都市化の波がありますが,かつては緑が丘地区でもキジなどの里山の動物が見られました。自然と人とが共生するまちづくりは理想であり,また現実的には大変難しい課題でもありますが,今後とも八千代市の谷津・里山が良好に保たれ,数十年後の八千代市に引き続きヤマトミクリが咲き,オオタカが空を舞っていることを願わずにはいられません。
溜め池や河川に生息する多年草で,水底で地下茎が発達する特徴があります。花期は5月から9月で,花が並んで咲く特徴があります。名前の由来は大和地方(今の奈良県あたり)で多くみられたからだと言います。
このヤマトミクリは水の流れの早い場所や深い水域,激しい水質汚濁に弱く,都市化された環境では根付きません。そのため非常に場所を選び,デリケートな条件が揃った箇所でのみ植生可能な植物なのです。これだけでも島田谷津の環境が稀有であることがわかります。
なお,岡山理科大学のHPにおいて,ヤマトミクリの記事にて「岡山空港の建設に伴って,近隣の公的施設に移植し成功したは良いが,異動してきた所長さんにそれが伝達されず,群生がきれいさっぱりに除去されてしまった,種の知識が無ければ単なる茂りすぎる雑草にみえたであろう。(要約)」とあり,八千代市においても同様の懸念はあります。皆さんもヤマトミクリを見かけたら,無暗に伐採することの無いようお願いいたします。
また,島田谷津では猛禽類「オオタカ」の生息が確認されています。オオタカはその名に反し,猛禽類の中では中型ですが,成鳥の羽毛の一部が青みがかった灰色をしているため,「蒼鷹(あおたか)」が転じてオオタカの名となったという説が有力です。オオタカもまた都市への進出組でもあり,明治神宮外苑などでも観察されておりますが,本来は里山の森林生態系において,食物連鎖の頂点に位置する生物です。
オオタカの行動圏は広く,その生息には狩りの対象とするハトやカラスなどの鳥類,ネズミやリス(八千代市内でもリスの生息が報告されています。)などのげっ歯類を中心とした小型哺乳類が豊富に生息していることが必要です。また,田でよくみられるサギなどの大型鳥類も時として襲うこともあります。
オオタカのような食物連鎖の頂点に立つ動物が生息できるということは,その下層の植物類や昆虫,小動物,中型の鳥類まで,多様で豊かな生物相が健全に存在していることを証明しています。
また,オオタカが獲物を狙うためには見通しの良い大きな木が必要で,地域の農林業の営みの中で育まれ,維持されてきた里山の森林が,オオタカの繁殖地や狩場を提供してきました。そのため,良好な里山環境が維持されてきたという何よりの証となります。
「ヤマトミクリ」と「オオタカ」という要素が揃う八千代市の谷津・里山。東葉高速鉄道の開通以来,八千代市北部の住宅がまばらな地区にも都市化の波がありますが,かつては緑が丘地区でもキジなどの里山の動物が見られました。自然と人とが共生するまちづくりは理想であり,また現実的には大変難しい課題でもありますが,今後とも八千代市の谷津・里山が良好に保たれ,数十年後の八千代市に引き続きヤマトミクリが咲き,オオタカが空を舞っていることを願わずにはいられません。

(今回の記事作成にあたり,『未来につなごう!!八千代市の里山・谷津田の自然』(八千代自然と環境を考える会 2021年),『八千代市水辺の動植物ガイドブック』(八千代市環境部環境保全課 1992年),『里山・里海暮らし図鑑 いまに活かす昭和の知恵』(養父志乃夫/著 柏書房 2012),『ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑』(樋口広芳/監修 石田光史/著 ナツメ社 2025年),『日本の野鳥650』(真木広造/写真 大西敏一・五百澤日丸/解説 平凡社 2014年),『現職野草検索図鑑〔単子葉植物編〕』(池田健蔵・遠藤博/編 北隆館 1997年)などを参考に作成しました。 )




